客の心動かせたチラシの裏
あるお店が最近、バッグのイベント販売を行った時の事、このイベント
案内チラシを欲しがるお客さんが続出した。実際に来店し、バッグを購
入したお客さんの中には、このチラシも保存しておきたいので、余分に
ほしいと申し出る人も少なくなかった。
このチラシ、一色刷りで手書きの素朴なものだが、特徴は裏面にこの
バックメーカーに関することが書かれている。たとえば、歴史。歴史の
長いメーカーだが、今日までの紆余曲折や苦労話までつづられている。
社長らのバッグ作りへの思いや持てる技術の事など、小さな文字でびっ
しり書かれている。
こうした情報はお客さんの感情に響く。こんな会社が作っているバッグ
はどんなバッグなんだろうと好奇心もわくし、バッグ好きなら一目見て
みたい気にさせられる。だからこそ購入客がこのチラシも一緒に保存し
ておきたいと申し出るわけである。この販売店の姿勢が素晴らしい。店
主は商品の背景情報をメーカーに直接取材しているのである。この店主
は他の商品を販売する際もしばしば取材するが、意外な事に担当営業で
は答えられないことも多いそうだ。するとやがて上層部まで話が上が
り、社長や引退した先代が出てきて回答してくれ、ようやく分かる事も
珍しくない。そして店主が引き出したエピソードを担当営業に語ると
「この商品にそんな背景があったんですね」と逆に驚かれることもある
そうだ。
店主は商品にまつわる情報を巧みに引き出し、表現している。こうした
事を売り手も行うべきだし、メーカーもあらかじめ準備し、販売店が語
りやすいようにリーフレットなどのツールにしておくといいだろう。こ
うした情報こそが、お客さんの心を動かすものだからである。
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2008.1.16日経MJ「客の心動かせたチラシの裏」より
写真のバッグはこのお話とは無関係です。