No.17「きねずみ」2012年11月2日
きねずみ
秋が深まり動物たちが冬ごもりに備えて活発に活動を
始めたらしく、道路で車にひかれたエゾリスを目にした。
昔は森林が豊かで、至る所にたくさんいたためか、エゾ
リスを「きねずみ」と呼ぶ人が多かった。
鉄道員だった祖父は石北線の常紋信号所(北見市留辺蘂
町金華)という山の奥で暮らしていたことがあった。
真冬の最中、祖父の家に毛皮を着た10人ほどのアイヌ
民族の男性が線路沿いに歩いてきて、「このあたりで
熊が冬眠していそうな場所はないか」と尋ねたそうだ。
その人達は少しの塩だけを持って、山の中で小動物など
を狩猟しながら過ごし、熊を仕留めると集落に帰ってい
ったという。そんな話を聞いて、きねずみという動物も
食料になるかもしれないと子供心に思った。祖父の影響
で、野山を回るのが大好きになった私は、きねずみを発見
するや執拗に追いかけ回し、パチンコで撃ったり、石を
投げたりした。
木から木へ飛び移り、素早く木の裏側へ逃げるきねずみ
にたまたま石が当たった事があった。初めて手にしたき
ねずみは、とても食料とは思えず、どんどん冷たくなって
ゆく姿に強い罪悪感だけが残った。
そのせいか、今でもエゾリスを見ると少し心が痛む。
つぶやきno17
リス達はあの堅いクルミを前歯で簡単に半分に割って食べる。
羨ましい。最近歯がだめになって部分入れ歯を入れてしまった私は、干したコマイも冬葉(トバ)もしっかり噛むことが出来ないので寂しい。
NO.18「冬葉」2012年12月11日
冬葉
今年のオホーツク海のサケ釣りは予想に反して大漁で
あった。特に網走や斜里方面に出かけた人は「もう配
る所もないし、冷凍庫もいっぱいだ」とか「処理でき
ません」とカミさんに怒られるので、「釣りにもいけ
ないわ」と嘆くつわものも多かったと聞く。
おかげで我が家でも思う存分、石狩鍋やイクラ丼を食
べる事ができた。11月の中旬になると、イクラを取っ
た雌サケを冬葉にする。少しブナがかった雌が油焼け
しづらくて保存が利くので使いやすいし、オスは他に
色々な食べ方があるのと、身が厚いので干し上がるの
に時間がかかるからだ。
作り方は、尻尾はつけたままで3枚おろしにし、中骨を
取り、3、4つの短冊に切る。短冊の身にさらに細かい
切れ込みを入れたら一度しっかりと塩漬けにして身を
引き締める。その方が塩水につけた場合よりも旨味が
凝縮される気がするからだ。2、3日後に流水で洗って
塩抜きをしながら味加減を見て、良ければ外に干す。
今だと時期的に虫はいないと思うが、カラスに食べら
れるので、注意と対策が必要だ。個人の感想だが、み
りんや白じょうゆに漬けたりいろいろ試したが、シン
プルに塩だけで味付けしたものが食べていても飽きな
い。硬く干し上がった皮付きの冬葉を薪ストーブの上
であぶって食べると最高である。
つぶやき*no18
日本語は本当に美しいと思う。軒下にぶら下がる干しサ
ケをみて冬葉と表現する事ができる外国語はないであろ
う。しかしこれからの日本人もそんな感性の人達はどん
どん減ってゆき、ドライシャケとか言い出すだろうね。