No.9 2011年11月28日(月) 美容師の得意技
美容室の家庭で育った私は、ゆったりと食事をすることが苦手だ。目の前に食べ物があると物も言わずに一心不乱に食べてしまいたくなり、食べ終わったらすぐその場を離れたくなる。外国に行ったときにはゆっくりすぎてつらかった。
子供時代は、店舗と住宅が一緒で住み込みの従業員の人がたくさんいた。食事は当番の人が作り、手の空いている人が大急ぎで食べるのが普通だった。ゆっくり食べるのは犯罪だ。そんな雰囲気であった。
師走等は特に仕事が忙しくなるため、食べる時間がまちまちで、昼食の人と夕食の人の区別もなくなり、集金に来る銀行員のお兄さんや営業の問屋のおじさんも時間があると適当に食卓に参加して、さらに混雑した状態となっていた。
大みそか、最後お客さまはお店を閉めた後の商店街の人たちだ。紅白歌合戦は待っている近所のおばさん方も一緒に見ていた。除夜の鐘がなるころに最後のお客さまが終わり、従業員も自宅に帰る。家の中は一挙にガランと静まりかえり、疲れて抜け殻の様になった母と父の作った年越しそばを家族で食べた。
そんな戦場みたいだった美容室の姿は、今のわが家にはないが、私には熱い物は熱いうちに、冷たい物は冷たいままで食べてしまえる得意技が残った。
*つぶやき*
昭和30年代エルム美容室と母の実家の真鍋美容室のスタッフが合同でお花見に出かけた。この当時の父は体重が
90kg以上あったらしい。しかし遺伝とは恐ろしいもので今の私は体型がそっくりである。