NO.18「冬葉」2012年12月11日

冬葉 今年のオホーツク海のサケ釣りは予想に反して大漁で あった。特に網走や斜里方面に出かけた人は「もう配 る所もないし、冷凍庫もいっぱいだ」とか「処理でき ません」とカミさんに怒られるので、「釣りにもいけ ないわ」と嘆くつわものも多かったと聞く。 おかげで我が家でも思う存分、石狩鍋やイクラ丼を食 べる事ができた。11月の中旬になると、イクラを取っ た雌サケを冬葉にする。少しブナがかった雌が油焼け しづらくて保存が利くので使いやすいし、オスは他に 色々な食べ方があるのと、身が厚いので干し上がるの に時間がかかるからだ。
作り方は、尻尾はつけたままで3枚おろしにし、中骨を 取り、3、4つの短冊に切る。短冊の身にさらに細かい 切れ込みを入れたら一度しっかりと塩漬けにして身を 引き締める。その方が塩水につけた場合よりも旨味が 凝縮される気がするからだ。2、3日後に流水で洗って 塩抜きをしながら味加減を見て、良ければ外に干す。 今だと時期的に虫はいないと思うが、カラスに食べら れるので、注意と対策が必要だ。個人の感想だが、み りんや白じょうゆに漬けたりいろいろ試したが、シン プルに塩だけで味付けしたものが食べていても飽きな い。硬く干し上がった皮付きの冬葉を薪ストーブの上 であぶって食べると最高である。


つぶやき*no18
日本語は本当に美しいと思う。軒下にぶら下がる干しサ ケをみて冬葉と表現する事ができる外国語はないであろ う。しかしこれからの日本人もそんな感性の人達はどん どん減ってゆき、ドライシャケとか言い出すだろうね。


No.17「きねずみ」2012年11月2日

きねずみ 秋が深まり動物たちが冬ごもりに備えて活発に活動を 始めたらしく、道路で車にひかれたエゾリスを目にした。 昔は森林が豊かで、至る所にたくさんいたためか、エゾ リスを「きねずみ」と呼ぶ人が多かった。 鉄道員だった祖父は石北線の常紋信号所(北見市留辺蘂 町金華)という山の奥で暮らしていたことがあった。 真冬の最中、祖父の家に毛皮を着た10人ほどのアイヌ 民族の男性が線路沿いに歩いてきて、「このあたりで 熊が冬眠していそうな場所はないか」と尋ねたそうだ。 その人達は少しの塩だけを持って、山の中で小動物など を狩猟しながら過ごし、熊を仕留めると集落に帰ってい ったという。そんな話を聞いて、きねずみという動物も 食料になるかもしれないと子供心に思った。祖父の影響 で、野山を回るのが大好きになった私は、きねずみを発見 するや執拗に追いかけ回し、パチンコで撃ったり、石を 投げたりした。 木から木へ飛び移り、素早く木の裏側へ逃げるきねずみ にたまたま石が当たった事があった。初めて手にしたき ねずみは、とても食料とは思えず、どんどん冷たくなって ゆく姿に強い罪悪感だけが残った。 そのせいか、今でもエゾリスを見ると少し心が痛む。


つぶやきno17
リス達はあの堅いクルミを前歯で簡単に半分に割って食べる。 羨ましい。最近歯がだめになって部分入れ歯を入れてしまった私は、干したコマイも冬葉(トバ)もしっかり噛むことが出来ないので寂しい。



No.16「幸せの粒々」2012年9月25日

幸せの粒々 長年釣りをしていると掛かったサケがオスなのかメスなのかだいたい予測できるようになってくる。うまく説明はできないがオスサケは概して大きく幅広な体型なので、掛かった瞬間から鋭角的に力強く豪快にあばれるが、最後は力尽きるのが早めだ。それに対してメスサケはやや丸い体型のせいなのか、割合すんなりと近くまで寄ってくるが最後まで粘り強くファイトする場合が多い気がする。 人間の男性と女性にも似たようなあてはまる部分があるのがおもしろい。雌のサケが掛かったとわかると、イクラ丼を前にワーイと歓声を上げる孫の姿がちらつき思わず竿を握る手に力が入りすぎて、逃げられる場合があった。無心でサケと対峙することが必要だ。釣った魚は自分でさばくのが我が家のルールだ。醤油イクラ、塩イクラ、筋子、筋子の味噌漬どれもおいしいが、お正月の定番である筋子の粕漬も必要なので迷うところだ。そんな事を考えながら、サケのお腹を開きずっしりとした新鮮なオレンジ色の粒々の卵を手にするとなぜか幸せな気分になれる。今年のサケの回帰予測が発表されているが不漁との予測だ。私が釣りに行く回数も体力低下等によりかなり減ってきている。幸せの粒々を楽しめるかどうかは私の腕にかかっているので心配だ。


*つぶやき*
アメリカ人はイクラを食べようとしない! カナダでもサケの卵は捨てていた。粒々の 感じが不気味らしい。それは喜ばしい事で ある。1Kgのステーキを食べてしまう大食漢 の彼らが毎日丼一杯のイクラを食べたら、 太平洋のサケは全滅していたにちがいない!