No.10.「雪原を行進する訳」2012年1月30日
夜の凍った野取湖の上。気温は氷点下10度以下で風が強く、遮る物がない為めちゃくちゃ寒い。駐車場の黄色いライトをバックに、黙々とソリを引いて歩く。30分ほど沖に歩くと釣り場に到着する。10個ほど穴を掘って釣り竿を仕掛ける。
狙いはコマイ。氷下魚と書いてカンカイとも呼ばれる。暗い時間帯に活発に活動するので、夜釣になる。発光ダイオード(LED)のヘッドライトは寒さで乾電池の電圧が低下する為、30分位で暗くなる。予備を持って行き、懐で暖めておいて取り替えながら使う。うまくいくと次々にコマイが掛かり、氷の上で瞬間冷凍になっていく。2,3時間すると100匹(20K強)ほどの釣果になり1人で運ぶ限界となる。帰りは吹雪模様になる日が多い。薄明るく見える駐車場のライトを目指して暗闇を歩くが、荷物が重たいので休み休み歩かなくてはならない。
息が上がり、顔のひげも凍って、映画で見た八甲田山の進軍の兵士のようである。
「そこまでして釣に行かなくてもいいしょ」と良く言われるが、鮮度が良くプリプリのコマイのタチ(白子)をさっとゆで、冷たい水で洗いポン酢をたっぷり掛けて食べるタチポンの味は絶品である。
それは雪原を行進した、釣り人だけに与えられる。
*つぶやき*
コマイが氷上で釣れるのが確立されたのはごく最近である。
タチが入っているのは1月いっぱいで、卵は糸こんにゃくと
子和えにするとうまい。産卵が終わると沖にちらばり釣れな
くなり釣り人もいなくなる。